4歳下の弟、宇野樹さんの運営するYouTubeチャンネル「Uno1ワン チャンネル」では、兄の昌磨が3匹のトイプードルたちと過ごす日常が投稿されている。3匹はぬいぐるみのようにモコモコのシルエット。茶色がトロちゃん、ダークグレーがEmmaちゃん、黒が昨年3月に迎えられた末っ子のバロンくんだ。パジャマ姿で愛犬を撫でる宇野選手の様子は、リラックスそのもの。氷上の凛々しい顔つきとはまた違うゆるっとした様子に、ファンも虜になっている。
2000年代後半に活躍した女子選手たちも、愛犬家が多い。トリノ五輪の金メダリスト・荒川静香さんはシーズー1匹とミニチュアダックスフント3匹。安藤美姫さんは現役時代にフレンチブルドッグ2匹とヨークシャテリアを飼っており、現在は介助犬協会の「介助犬サポート大使」を務めるなど、犬との縁は深い。
「(フィギュア選手が犬をかわいがるのは)理にかなっていると思います」と話すのは、アニマルセラピーの分野に詳しいヤマザキ動物看護大学講師の秋山順子さんだ。
秋山さんによれば「犬は散歩を伴うので、選手の生活リズムを保つうえで、比較的相性が良いのでは」と指摘する。ルーティンがあることは、心の安定を図るうえでも一定の効果がある。
また、猫は馴れない環境に連れていくことにハードルは高いが、犬は比較的容易に連れ出して、人間と行動を共にしやすい。シーズン中に国際大会などで遠征が多いフィギュア選手に好まれる要因なのかもしれない。実際に、海外遠征へ連れていく選手も多く見受けられる。
「選手にとって連れていくことが負担でなければ、なるべく日常の条件・環境を揃えておくためにも、遠征先で飼い犬と過ごすことは効果的だと思います。おそらく日頃から犬と一緒に遠出をされて、外に出かかけることに慣らしているのだと思います」(秋山さん)
そして、なんといっても犬の癒し効果だろう。
「犬に限らず、強いストレスを被る人の心の安定を図るうえで、動物との触れ合いは非常に良い効果をもたらしてくれます。犬を飼っていると『散歩をする』『しつけをする』といった触れ合いがあり、それによって『ストレスホルモン』と呼ばれるコルチゾールの分泌量が下がります。また、モチベーションや集中力の向上といった効果が見込めると思います。また、犬を撫でる、犬と見つめ合うといった動物とコミュニケーションを取ることで、オキシトシンというリラックス効果を生み出すホルモンが多く分泌される効果もあります」