マンガとドラマの「コウノドリ」の医療監修者の一人であり、ツイッターなどでも発信を行う今西洋介医師。積極的な活動の背景には、医療啓発への強い思いがある。週刊朝日ムック『医者と医学部がわかる2022』(朝日新聞出版)で話を聞いた。
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地域の周産期医療の中核施設である大阪母子医療センターで、新生児専門医として治療にあたる今西洋介医師。低出生体重児や疾患のある赤ちゃんに対して24時間態勢で集中治療を行う新生児科は、一般に激務のイメージが強い。
「最も弱い立場の人を診たいと、後期研修のときに新生児科を選びました。新生児集中治療室(NICU)での治療が必要な赤ちゃんにとっては、超急性期と呼ばれる生後72時間の治療が非常に重要です。そのため新生児科の医師はその間NICUに張り付いて治療にあたることが多いのです。僕も研修中は自宅にほとんど帰れませんでした」
過酷な状況を経験したにもかかわらず、新生児科医となることを選んだのは、それを超えるやりがいがあるからだという。
「NICUは治療の場ですが、同時に赤ちゃんを育てる場でもあります。呼吸器をつけていた赤ちゃんの状態が安定して保育器を卒業し、やがて退院するまでのご家族の姿を見ていると、家族になっていく瞬間に立ち会う喜びを感じます」
担当した赤ちゃんや両親との間に生まれる絆も代え難いものだと語る。
「親御さんの中には『今西先生は第3の親です』と言ってくださる方もいます。初めて主治医となったお子さんのご家族とは今でも交流が続いていて、入学式に出席させていただきました。こんなふうに家族の一員とまで思ってもらえる仕事って、ほかにはないと思うんです」
■人生の転機となった「コウノドリ」
新生児科医としてのキャリアを積む中で、2013年に大阪のりんくう総合医療センターに着任。同センターで、産婦人科を舞台としたマンガ『コウノドリ』主人公のモデル・荻田和秀医師と出会う。