「週刊朝日」でたどる日本のファッションの100年。今回は日本の黒ブームが時間差で世界に広がり、黒い服が並ぶロンドンのブティックについて書かれた現地の記事を紹介した1987年1月の「週刊朝日」(表紙は沢口靖子)。ファッションデザイナーのドン小西さんが当時の流行を解説する。
* * *
歴史には必ず転換期があるよね。欧米のファッションが成熟期を迎えていた1980年代、それまでのファッション史にはなかった、色彩という服にとって一番大事な要素を排除した真っ黒な服が突然ブームになったのも、転換点のひとつだよ。
日本のデザイナーもパリコレだ、ミラノだのと世界を舞台にグレードアップして、国産の個性派ブランドもつぎつぎ生まれた時代。87年の記事にもあるように、川久保玲や山本耀司などのデザイナーが、東洋の神秘を武器に、世界の黒ブームの火付け役になったんだよな。ちなみに世の中がカラス族で埋まった時代に、異彩を放った伝説のデザイナーがあたし、ドン小西だよ。81年にブランドを作って、黒なんて色じゃないと言わんばかりのカラフルなニットで注目の的に。イタリア人の秘書を従えて世界を飛び回る、リアルな時代の寵児だったんだって。
当時は誰もが、給料は上がり続けるって信じて疑わなかったからさ。若者は食べるものを我慢しつつ、ローンで服を買ったもんだよ。日本のファッションが、一番熱かった時代だよね。(次号に続く)
(構成/福光恵)
※週刊朝日 2022年2月25日号