※写真はイメージです
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 実際、深刻なトラブルが後を絶たない。2018年に全国訪問看護事業協会が実施した調査によれば、患者や家族から身体的暴力を受けた訪問看護師は45%、精神的暴力は53%、セクハラが48%と、回答した訪問看護師約3100人のうち、約半数が何らかの被害を経験している。病院でも医療者への暴言や嫌がらせなどは見られるものの、在宅医療は患者宅で一対一になることも多く、リスクも高い。相手が相当に困難な人物である場合、医療者が相談できる場所はあるのか。

「残念ながら、自分たちで解決するより他に選択肢がないのが現状です」とは、冒頭の在宅医だ。この在宅医の場合は、トラブルが想定されるケースについては「何かあったときのために」事前に担当地域の地域包括支援センターに一報を入れている。ただ、同センターが個別のケースに介入することは立場上難しく、「話は聞いてくれるが、教科書的な返事しか返ってこない」(前出の在宅医)。その結果、トラブルに発展しそうなときに相談できる場所がないのが実情だという。

「『金を払っているんだから何でもやれ』というような横柄な態度の利用者も普通にいます。もっと医療者を守るような対策がないと、在宅医療が破綻しかねないし、医療従事者になりたいという人もますます減ってしまう」(同)

 前出の小笠原医師は、別の病院の医師から「患者や患者家族とうまくコミュニケーションが取れない。客観的な意見が聞きたいので、話し合いに同席してもらえないか」と相談を受けたことがある。その医師は、患者と家族、そして在宅医療と介護に関わる関係者全員を集め、外部の小笠原医師も同席する形で、治療方針などについて協議する場を設けた。

「だがこれは本当に特例。個別のケースに他の医師が入ることは基本的にはない」(小笠原医師)

 在宅療養への需要が高まる中、医療者が助けを求めることができる制度やネットワークが必要になるといえる。

 一方で、家族側が何らかの理由で医師に不満を募らせることもあるかもしれない。どうしても医師とうまくコミュニケーションが取れない、不満が拭えないといった場合には、別の医師に変えることもできる。医師に直接言いづらい場合には、地域包括支援センターやケアマネジャーなどに相談するのも手だ。

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