
トラウマを引きずる不安と闘いながら、それでも活躍するチームのメンバーの姿が励みとなって、「今のままで終われない」という思いが芽生えてきた。退院後、選手村から北京へ移動してチームと合流した時にはホッと安堵したという。
「移動は車イスですが、立つことはできたので、チームメートたちが『もう立っていいの?』って驚いていました。みんなと一緒に帰国することができたのが、一番うれしかったです」
スノーボードは常に危険と隣り合わせのスポーツだ。大けがを負うリスクを負いながらも、選手たちは何度もコースに向かっていく。愚問だと思いながら、なぜ危険を顧みずに滑ることができるのか聞いてみた。
「正直、怖いんですよ。でも、技が決まった時のうれしさは恐怖を上回る。最後の最後に技が決まったら、怖さなんて忘れているんですよ。もう少しでできるようになりそうって思うと、どんどん滑りたくなってしまう。すぐにできることは面白くない。だからこそ、やってやろう、とその気になってしまうんです」
5年前、芳家は前十字靭帯断裂というケガから見事に復帰した。今回も目覚ましい回復を遂げて、雪上に帰ってきてくれるに違いない。4年後の活躍を待ちたい。
(AERA dot.編集部 岩下明日香)