その呼吸法を毎日、アトリエのバルコニーに立って実践しています。息切れは病院のマニュアル通りの治療ではお手上げ状態です。結果は運動不足を指摘されてハイ終りです。病気の症状は患者の想像力も働かせて病人自らが発見しなければなりません。医師はそれをサポートするのです。そんな訳で、アトリエのバルコニーは、僕にとっては温室効果満点のリハビリルームになっています。
呼吸訓練をしながら、読書でもすればいいのですが、もともと読書はあまり好きじゃないので、活字を避けて画集の絵だけを何十分もかけて、ぼんやりと絵の世界に溶け込むのです。活字はどうせ人の経験した観念です。自分の肉体経験のないものは観念を肥大化させて、絵を描く行為を邪魔するだけです。僕は読書に代る行為としてはいつも無為であろうとします。頭を空っぽにすることで、創造的になります。頭から観念を追放することで、肉体も活性化します。脳が言葉や観念でギシギシにつまっている場合は自分の吸収した知識でしか発想できません。
知識から解放されて人間は初めて自由になれます。すでに発想の原型や答えは自分の肉体の中にあります。あとは宇宙のマザーコンピューターでもあるアカシックレコード(※宇宙の誕生以来のすべての事象など、あらゆる歴史が記されているという記録層)が待機しています。そのアカシックレコードに意識と波長を合わせれば余計な知識や努力は必要ないです。そこには人類の歴史や宇宙の知恵が内蔵されているのです。僕のような横着な怠け者はそのアカシックレコードを利用します。僕にとってのAIです。
そんな風に考えると僕のアトリエ自体がアカシックレコードです。アトリエに這入った途端、自然にチャンネルが切りかえられます。アトリエに入らないと全く何も浮かびません。浮かべるためには常に脳を空っぽにしておく必要があるのです。脳が満杯の時は得た知識からでなきゃ何も浮かびません。知識で身動きができなくなるとアカシックレコードの知恵が入る余地がないのです。