アトリエはアカシックレコードであると同時に僕の肉体でもあります。だからその肉体を常に整理整頓して清潔にして置かなきゃ、病気になることもあります。ところがアトリエ内は物であふれています。だから時々大掃除をする必要があるのですが、ひとつの展覧会があるためにアトリエ内はキャンバスや絵具や筆や、その他の物であふれてしまいます。人間の身体でいえば食べ過ぎでしょうね。
物を作るということは、肉体の内部の何かを吐き出し、空っぽにして、浄化することです。常にアトリエとは肉体意識で接する必要がありますね。
挿絵の写真はアトリエの横の遊歩道から撮ったもので、今の季節は枯木の一年で一番貧相な時期です。
横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰
※週刊朝日 2022年3月11日号