今回のカルテ改ざん問題について、<患者への影響がなかった事案とはいえ、誠に遺憾なことであり、再発防止に全力をあげて努めて参ります>としている。処分内容は、全教職員が閲覧可能な学内専用ページで通知しているが、院内の調査結果は厚生労働省には報告していないという。

 厚労省が定めている「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、カルテ改ざんについて<故意による虚偽入力、書換え、消去及び混同はそもそも違法行為である>と明記されている。同省の担当者も、「文書偽造罪や医師法違反に問われる可能性がある」と話す。

 カルテ改ざんによって患者に実害が出たり、診療報酬の不正があったりした場合、その報告を受けた厚労省が監査して処分する場合もある。手術件数の水増しについては、同省医政局は、「一般論」と前置きした上でこう説明する。

「虚偽のカルテによって特定の地位や許認可を得た場合、許認可を取り消すこともありえます」

 それでも、カルテ改ざん事件は全国で相次いでいる。

 三重大医学部付属病院(津市)では、臨床麻酔部の准教授(当時)が、手術時に投与していない不整脈の薬剤「ランジオロール塩酸塩」を使用したとして、カルテに虚偽記入していた。第三者委員会の調査によると、2018年4月~20年3月に約2200件、詐取した金額は計2800万円超にのぼった。元准教授は詐欺と公電磁的記録不正作出・同供用の罪に問われ、昨年4月に懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決を受けた。

 13年に東京女子医大東医療センター(東京都荒川区・当時)で白内障の手術を受けて失明した男性が、東京女子医大を訴えた。東京地裁の判決(昨年4月)は、カルテの内容について「事実認識と異なる内容を意図的に追記し、改ざんした」と認め、病院に約960万円の賠償を命じた。

 ただ、カルテ改ざんが刑事罰に問われたり、損害賠償が認定されたりするケースは珍しいという。医療裁判に詳しい貞友義典弁護士は言う。

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