イタリアと同じく最終節での首位陥落により、プレーオフのパスCに振り分けられたポルトガル。準決勝で激突するトルコも油断できない相手だ。タレントの差を見れば圧倒的、故に突破が有力視されているが、その豊富な選手を生かしきれていないのだから、不安はイタリア以上に大きいかもしれない。
そして絶対エース、クリスティアーノ・ロナウドの不振も憂慮すべき事態だ。今季マンチェスター・ユナイテッドへ感動的な復帰を果たし、土壇場でチームを救うゴールを何度も決めてきたのは確かだが、ラルフ・ラングニック監督のいわゆる「ゲーゲンプレッシング」には適応できていない。守備での貢献は以前にも増して期待できなくなった。ドリブルでチャンスを作るシーンも激減、頻繁にポジションを離れるために周りに混乱をもたらすシーンも散見され、オン・ザ・ボールでの貢献度も低下している(もちろん彼1人の責任ではない)。「それでも試合を決めるのがロナウドだ!」という意見も理解はできるが、90分間起用するメリットとデメリットを天秤にかければ、疑問符がつくのも当然だろう。かつてともにビッグイアーを勝ち取ったギャリー・ネヴィルやおなじみジェイミー・キャラガーら現地解説陣の中でも、その心理的な影響や得点の部分では評価しつつ、「先発から外すべきでは?」との論調が日に日に高まっている。
ポルトガル史上最高の選手であることに異論はなく、国際試合歴代最多ゴール記録を持つ37歳がサッカー史上最高の選手の1人であることは間違いない。40歳まで第一線でのプレーを望む彼にとっては最後のワールドカップになる可能性もあるが、そういった状況で人智を超えた力を発揮してきたのがクリスティアーノ・ロナウドであり、20年近くポルトガルを牽引してきたのは彼に他ならない。だが、いつまでも彼に頼りきりで良いのだろうか? 守備で期待できない選手を先発から使う余裕はあるのだろうか? この世界で最も厳しいプレーオフで、国の代表チームとして新たな一歩を踏み出す必要があるだろう。