しかし、そう簡単にいかないのがサッカーというスポーツなのかもしれない。迎えたW杯予選、イタリアは最後の5試合で1勝しかできず(4分け)。EURO制覇の立役者でバロンドール受賞を推す声も上がった名手ジョルジーニョのまさかの2回連続PK失敗(第5節スイス戦)が響き、最終節で首位陥落。5年前と同じく、プレーオフに回ることとなった。
パスCを戦うイタリアは、初戦で北マケドニアと激突する。英雄ゴラン・パンデフは去ったものの、予選でドイツを破った彼らを侮ることはできない。そして準決勝を突破したとしても、迎えるのは欧州屈指のタレント集団、ポルトガルだろう(ポルトガルの準決勝の相手トルコも十分に力をつけているが)。さらに絶対的存在だったフェデリコ・キエーザは負傷で欠場が濃厚と、前回よりも厳しい戦いを強いられそうだ。EURO優勝を裏で支えたダニエレ・デ・ロッシがスタッフとして代表に復帰することに加え、新世代の台頭と、ポジティブなニュースも聞こえてはくる。だが、今の彼らに必要なのは、欧州の頂点で掴んだ自信と誇り、国中を巻き込んだ連帯感だ。運命のプレーオフ開始まで残り約2週間、再びそれを取り戻せるだろうか。
2大会連続予選敗退など、あってはならない。あの悲劇は、繰り返してはならないのだ。
【ポルトガル】
そんなイタリアと、プレーオフ決勝で対戦する可能性があるのがポルトガルだ。
名将フェルナンド・サントスの下、相手の長所を徹底的に潰す守備と驚異的な勝負強さを誇るクリスティアーノ・ロナウドを中心としたシンプルな攻撃でEURO2016を制覇、初の国際タイトルを手にした。続くUEFAネーションズリーグでも初代王者にも輝いた。世界でも傑出する各クラブの育成組織から世界的なタレントを次々に輩出し、黄金期を迎えたかに思われた。
だが、ブルーノ・フェルナンデスが象徴するように、今のチームはそのスター選手たちを効果的に生かせていない。いわゆる格下相手には前線の「個」の力でゴールを量産しているが、ファイナルサード攻略はその「個」に頼り切りであり、チームとしての解決策をなかなか見いだせていない。サントスは豊富なタレント陣の共存に苦しんでいる。それが予選最後の2試合、アイルランド戦のスコアレスドローと、日本でもおなじみ“ピクシー”ことドラガン・ストイコビッチ監督率いるセルビアとの最終節(1-2)で如実に現れてしまった(セルビア戦ではブルーノやジョアン・フェリックスといった選手がベンチスタート)。