加藤容崇(かとう・やすたか)/ 日本サウナ学会代表理事・慶應義塾大学医学部特任助教。
加藤容崇(かとう・やすたか)/ 日本サウナ学会代表理事・慶應義塾大学医学部特任助教。

 足までしっかり温めてからであれば、水風呂も入りやすくなる。最初は、膝や腰ぐらいまでにとどめて、20~30秒ぐらいでもOK。徐々に慣らしていけば、いずれ肩までつかれるようになるという。

 順調にサウナ浴ができるようになり、「ととのう」体験も楽しめるようになると、たびたび話題になるのが、「ととのい」のスランプ状態「ととのイップス」だ。最初のうちは順調にととのっていたが、回を重ねるごとに、なかなか期待通りにととのわなくなることを指すものだという。

 加藤医師は「ととのい方は十人十色で個人差がある」と話す。同じ人でも、その日の体調によって体は変化する。「ととのイップスに陥った」と話す人の多くは、「そもそも自律神経のメンテナンスがうまくいっている」と指摘する。

「サウナに入ると自律神経の機能が劇的に上がります。最初から自律神経の活動が活発な状態であれば、サウナに入っても、そもそも元気なので大きく変化せず、『ととのった』という変化を体感しにくい。それを『ととのイップス』と感じている場合もある」

 それでも、「ととのい」にこだわる人は少なくない。休憩を挟まずにサウナと水風呂をひたすら往復する極端なサウナの入り方によって「ととのイップス」を脱し、「究極の『ととのい』を経験できる」とする誤情報もSNSなどで流されている。こうした行為は非常に危険と加藤医師は警鐘を鳴らす。

「休憩を挟まない極端なサウナの入り方ではととのわないばかりか、のぼせ症状や最悪の場合には失神する危険性もあります。サウナは必ず休憩を挟みましょう」

 休憩を挟んでいても、過度な入浴が害になることもあるという。3~4セット程度でも負担が大きく感じる人もいて、そのような人は自律神経の機能が逆に下がってしまい逆効果になることも。加藤医師は、サウナのセット回数や頻度、入浴時間は固定せず、その日の体調に合わせて調節することを勧める。

 加藤医師は2021年、サウナ好きが安全にかつ一番気持ちよくサウナ入浴でき、「楽しみ、気づいたら健康になっていた」という明るい社会を目指して『株式会社100plus』を立ち上げ、「ととのう」をわかりやすく数値化するデバイスやアプリの開発も進めているという。

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