処遇改善が始まって10年。保育士は実際にどのくらいの賃金を得ているのか。東京都は独自の処遇改善である「保育士等キャリアアップ補助金」を受けた保育園に対して、園の財務情報と賃金の実績報告を求め、公開している。筆者は都内の私立認可保育園約2千カ所の19年度の賃金実績を集計し、常勤保育従事者の賃金を調べた。
都内認可園の最低賃金、
年間約228万円
公開された月額賃金を年換算し、低い順から30園を表にまとめた。なかには、「事務処理に不手際があり、実際より低い数字になっていた。正しくは約407万円だった」(けいわ会)、「ボーナス分を入れ忘れた」(清心福祉会)、「対象でない社員を計算に入れてしまった」(ニチイ学館)など、実際には年300万~400万円だったという記載ミスもあるが、実績報告は「相違ないことを証明いたします」として提出した書類であるため、そのまま記載する。表には園児数と保育従事者数(職員数)、職員の平均経験年数も記した。
都内の認可保育園で最も年間賃金が低かったのが「ミアヘルサ保育園ひびき中板橋」の約228万円で、運営会社のミアヘルサは薬局や介護施設の展開を主力としている。次いで低い「中野鷺ノ宮雲母保育園」(約234万円)は、人材派遣会社のモード・プランニング・ジャパンが運営。3番目に低い「ゆめの樹保育園なりたにし」(約240万円)は社会福祉法人フィロスが運営し、理事長は名古屋市の英語教育会社の社長だ。異業種参入が目立ち、30位までの大半を株式会社が占めた。
国と都から支払われる処遇改善手当を21年度の金額で単純計算すると、都内で働く保育士の賃金は最大で年に約565万円が公費で出ていることになる。だが、今回の調査で分かった都内全体の平均年間賃金は約406万円。運営元が社会福祉法人は約442万円、株式会社等が約363万円で、いずれも公費の額に及ばない。ただ、保育士を多く雇うと賃金が低くなる次のような事情もある。