西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、開幕投手を決める複雑な事情について明かす。
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プロ野球は3月25日の開幕を前に、各球団で開幕投手が決まってきた。昔はよく、開幕は「シーズン全試合分の1」なのかどうかと議論になった。私の個人的な意見だが、良いスタートを切るに越したことはないが、それは球団の事情によって比重は異なると言わざるを得ないと思う。開幕投手の決め方も事情は異なる。
例えば、巨人。原辰徳監督から決定権を託された桑田真澄投手チーフコーチは菅野智之を選んだ。ファンの方からすれば当然だろうが、シーズン全体を見た配置で悩み抜く。例えば、菅野は中5日で回れるのかどうか。逆に中6日で、ずっとカード頭に投げるということで、相手のエース格を上回れるか。そして他に先発は4、5人必要になるわけだから、その中に大きく飛躍できる可能性を秘めた投手がいるのかどうか。そういったことを総合判断して決める。
ロッテは4月に34歳になる石川歩を開幕投手に指名した。「なぜ?」と思う方もいるだろう。高卒3年目で覚醒しつつある佐々木朗希、昨年後半戦だけで完封を含む3完投し、チームトップ10勝を挙げた左腕の小島和哉がいる。それでも、井口資仁監督は「朗希とか、他の投手の出来もよかったが、開幕投手は違うプレッシャーもある。それをはじき返せるのが石川」と2019、20年と大役を経験した実績を重く見て、指名した。昨年6月に右肘関節クリーニング手術を受けたベテラン右腕に託した。
球団本部内に設置されたコーディネーター部門のピッチングコーディネーターに就任した吉井理人の意見も色濃く出たのではないかと推測する。優勝がチームにとっての最大の目標ではあるが、そのための方策は各球団によって異なる。ロッテで言えば、今季優勝するために一番大事なのは、佐々木朗であると考えたならば、どういう配置をするだろうか。