飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回、話を聞かせてくれたのは北海道在住の自営業、宮本直美さん(56歳)。ある日、一匹の大きな雄猫が庭先にふらっと現れ、家猫となり、そこから9年一緒に過ごしました。優しく気配りができ、先住猫とも馴染み、息子やその友達とも仲良しになり、素晴らしい時間を届けてくれたそう。今でも溢れる猫への思いを語ってもらいました。
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私にとって特別な猫、大きく優しい「ヤタロー」の話を聞いてください。
彼が家の裏口にふらーっと現れたのは、2011年11月の朝でした。
私の夫は競走馬の生産牧場で働いていて、当時の家は牧場の前にありました。厩舎に外猫がいるのですが、見かけない顔なので、誰かに捨てられたのかなと思いました。
顔をよく見て、驚きました。
「生まれ変わり?」
夫が結婚前から飼っていたオス猫の「ちゃあ」に、よく似ていたのです。ちゃあは、ヤタローが現れた5年前に亡くなっていました。
すぐに家族にしたいと思いましたが、その時、家に飼い猫が5匹いたので、仲良くできるか心配でした。でも雪がちらついてきて外はどんどん寒くなってくるし、小学3年生だった息子も「あの太った猫ちゃんかわいそうだね」と気にかけていました。
それで、2週間くらい経って室内に入れることにしたのです。
◆ 息子とはきょうだいであり親友
ヤタローの名は、一家で応援する地元の球団・日本ハムファイターズに所属していた、坂元弥太郎選手からもらいました。他の球団から移籍してきたのにすぐにチームに溶け込み、選手やファンに愛されて人気者になった。そのキャラにちなんで名づけました。
本家同様、ヤタローもすぐに仲間に受け入れられました。ヤタローは賢く穏やかで、“外から来た”という立場をわきまえたように、先住猫たちが近づくと静かに離れて様子を見て、絶妙な距離を取りました。それで揉めることなく自然と猫と仲良くなりました。ヤタローが寝ると、そこに仲間が集まってくる感じ。人気者でしたよ。