特に、シャム系のメスのマメがヤタローにいれこみましたね。マメが慕っていたオス猫が亡くなると、翌日からヤタローに鞍替えして、夫婦のようになったんです。
友好的なヤタローは人も惹きつけました。
息子とはきょうだいでもあり、親友でもありました。息子に「なにかある!」と察した時は片時も離れず傍にいました。
よく覚えているのは、息子が小学生の時に大事にしていたゲームを自分で壊してしまった時のこと。(ゲームが壊れたショックと、夫と私にすごく怒られたことで) 玄関でワンワン大泣きしたことがありました。
その時、ヤタローは私を見てから、泣いている息子の横に座り、顔を覆っている息子の手に自分の前足をちょんと添えたんです。まるで「大丈夫だよ!元気出せよ!」と励ましているようでした。
こんなこともありました。息子が楽しみにしていたキャンプでけがをして、足に包帯を巻いて帰宅した時、ヤタローは息子の顔をのぞき込んで心配そうにしていました。次の朝、足を引きずりながら学校に行く息子を心配だったのか、玄関のドアの前に先回りして待っていて、「一緒に学校に行こうか?」と気遣っている感じでした。
ヤタローは、息子の友達からも大人気。“ヤタロー会いたさ”で、家によく子どもたちが集まりましたね。ヤタロー!と呼ぶと「ヒャン」と鳴いて返事をし、その声が大きな体に似合わず可愛い声なので、息子の友達は面白がって何度も名前を呼んで。テレビゲームに夢中になる子供たちの輪に加わり、一緒に画面に前足を出して遊ぶこともありました。
とにかく人間ぽいんです。
ソファに肘をついて座ったり、車中でシートベルトをして静かに座ったり、仕草も面白く、くすっと笑ってしまうこともよくありました。
ヤタローのような猫は初めて、つきあううちに自分の相棒のようにも思えました。
◆ 思いがけない宣告後、目まぐるしい日々が
ヤタローは、家に迎えてすぐの診療で、「右足の関節が少しつぶれている」といわれたけれど、生活に支障はなく、ずっと健康そのものでした。
そんなヤタローに異変が生じたのは、2020年9月。家にきて約9年経った時です。外出先から帰宅すると、不自然な格好をして、私が朝に見かけた時から一歩も動いていない感じでした。