お彼岸のお供といえばおはぎ(ぼたもち)。あんこともち米のハーモニーが幸せな記憶を呼び戻す。そんな日本伝統の和菓子に、新風が吹いています。AERA2022年3月21日号の記事を紹介する。
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「おいしゅうなれ、おいしゅうなれ、おいしゅうなれ」
そんな言葉を小豆にかけながら、主人公(上白石萌音)はおはぎを作る……。あんこがつなぐ3人のヒロインのファミリーヒストリー、朝ドラ「カムカムエヴリバディ」(NHK)のシーンだ。そうしてできた美しいおはぎに生つばをのみ、Megumi runs out to buy Ohagi……などとナレーションをかぶせながら、おはぎを求めてコンビニに走った人も多いと思う。
■日替わり定食のよう
念のためいうと、おはぎとは、丸めたもち米をあんこでくるむ和のスイーツのこと。最近は全国に専門店も増え、おはぎ2.0と言える進化した商品が続々誕生して、人気となっている。
東京での草分けは、行列ができる専門店として知られる「タケノとおはぎ」。デリカテッセンを開いていた小川寛貴さん(41)が2016年、祖母の「タケノさん」が作ってくれたおはぎを再現して開いた専門店だ。
「小さい時は、あんこが苦手。でも祖母のおはぎだけは甘くなくてパクパク食べられた。たまたま隣の店舗が空いたので、日本らしい店ができないかと考えた時、僕に作れるものといえば、祖母が作ってくれたおはぎしかなかったんです」(小川さん)
店頭に並んだのは、祖母の味をそのまま再現したつぶあんとこしあんのほか、5種類のフレーバーを加えデザインにも凝ったおはぎ。オープンから2年ほど経つと、SNSを見た遠方のお客さんも増えてきた。
二度と同じ組み合わせがなく、いわば「一期一会」という日替わり7種のラインアップが店頭に並ぶのも、オープン時から変わっていない。例えば2月のある日に登場したのは、「カボチャのスパイス餡(あん)とレーズン」「ザクロとココナッツ」「花梅『思いのまま』」、「フクジュソウ」など。