「しかも、『ウエスト・サイド・ストーリー』のような既存作品を上演するわけではなくて、脚本も、音楽も、舞台セットも自分たちで完全オリジナルのものを作ります。私からすると『1週間あるんだからもっと早く言ってよ~』という感じでしたが、周りはそんな状況も楽しんでいて、私も徹夜で曲を作ったり、ほかの人が弾けるようにアレンジして譜面に起こしたりしました。そうして入学式当日に、キャンパス内の劇場で家族や関係者の前で発表するまでが最初のオリエンテーション。出会ってまもない人たちと入学前からすごく濃密な時間を一緒に過ごすので、不安や孤独を感じる暇もなく、自然と仲良くなっていましたね」
■宗教や政治の話もオープン 食事はいろいろな人と
ハーバードは全寮制の大学だ。キャンパスの敷地内に大小いくつもの寮が建ち並び、学生たちは相部屋で生活を送るのだが、こうした日々の生活でも社交性が養われる。
「私が1年生のときに暮らしていたのは一棟15人くらいの小さな寮でした。人種はばらばらで、私はフランス系アメリカ人と、中国系&インド系アメリカ人の子との3人部屋。上の階にはアフリカ系アメリカ人、隣の棟にもアジア系やオーストラリア系の子がいましたが、みんな部屋のドアは開けっ放し。何か困ったことや分からないことがあったら、いつでも聞きにいける雰囲気でした。宗教や政治に関することでも、日本のようにタブー視したり気を遣って話題にしなかったりという文化もありません。
渡米1年目が大統領選挙の年だったのですが、オバマ大統領が二期目の当選を決めると、いくつもの寮から大きな歓声が聞こえてきたのは今でも忘れられません。嬉しさのあまりキャンパス内を駆け回る人もいて、大統領が決まっただけでなぜそんなに喜ぶのか当時の私には不思議でしたが、みんなに質問して、ハーバードの学生がいかに政治や選挙について真剣に考えているのかを教えてもらいました」