3月16日深夜、宮城、福島両県で震度6強を観測する地震が起き、広範囲で被害が出た。AERA3月28日号では、今回の地震を緊急取材。コロナ禍の災害における「備え」を専門家に聞いた。

棚が倒れ、商品が散乱した雑貨店/福島市
棚が倒れ、商品が散乱した雑貨店/福島市
この記事の写真をすべて見る

*  *  *

 コロナ禍のなか、今回の地震のような災害に備えるにはどうすればいいか。

 国は、日ごろの備えとして飲料水(1人1日3リットルを目安)とカップ麺やアルファ米、ビスケット、缶詰などの非常食を少なくとも3日~1週間分、備蓄するよう推奨する。さらにやっておきたいのは、自宅周辺の災害リスクを知ることだ。最も一般的なツールがハザードマップ。各自治体が作成し、ネット上でも見ることができる。

 総合防災コンサルタント事業を行う「防災クリエイティブマネージメント」(大阪府大阪狭山市)の防災アドバイザー、岡本裕紀子さんは、こう指摘する。

「コロナ禍での密を防ぐため、『分散避難』を考えておくことが大切です」

 分散避難とは自治体指定の避難所だけでなく、さまざまな場所で身を守ること。岡本さんは一般的な優先順位として・在宅避難・親戚・知人宅・テント泊・車中泊・避難所──を挙げる。

「マンションなどの場合は建物が倒壊する可能性は低く、住める状態であれば『在宅避難』が基本です。どこに避難するか、災害発生後の対応について家族で定期的に話し合うことが大切。コロナの影響で生活リズムが変わった人も多く、いま一度、家族でしっかりと情報共有をすることが重要です」

 避難所しか選択肢がない場合も少なくない。

 岡本さんは、感染予防力の高い避難所運営を実現できるよう、地域ぐるみの取り組みが必要だと言う。

「具体的には、看護師や保健師など、専門知識を持つ住民をリストアップすると同時に、その方々にも参加してもらった上で、コロナ禍における避難所運営について検討を進めることです」

 災害時に役立つ感染予防グッズを備えておくことも大切だ。国はマスク、体温計、衛生用品の準備は必須としている。その上で岡本さんが推奨するのは爪切り、スリッパ、口腔ケア用品の3品だ。

「爪切りは、災害後でもこまめに爪を短く整えることが感染予防につながります。スリッパは、床にウイルスが付着している可能性がある。床を介した感染を予防するためdに準備しましょう。そして、清潔な口内環境は全身の健康とつながっているので、口腔ケアとして、水がなくても使えるマウスウォッシュや歯磨きシート、キシリトールのガムを準備しておくと役に立ちます」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年3月28日号