増加のきっかけは国立大学協会が15年に公表した「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」だ。「確かな学力とともに多様な資質を持った学生」の受け入れを目的に、推薦入試、AO入試などの入学定員を全体の30%を目標に拡大するとした。翌16年度には京都大がAO入試に分類される「特色入試」を導入し、例年100人前後の合格者を出している。
目標設置の背景には後期日程の縮小と廃止があるという見方もある。AO、推薦入試の合格指導を行う早稲田塾の中川敏和さんはこう話す。
「以前から後期日程で入学する学生は入学後の学習意欲が低い傾向があると指摘されていました。前期日程で志望校に合格できなかったという理由から志願度を下げて入学した学生が多かったためです。そこで後期日程の定員分を、より意欲が高い学生を確保するために別の入試に充てようという狙いが全国の国立大に波及したのだと思います」
大学が求める「意欲が高い学生」とは。
「それは、自分で問いを立てる人材です。そういう学生を選抜するためには、与えられた問いに答えるという従来型の試験では問えない、探求型の能力を試す試験を実施する必要があります」(中川さん)
■筑波大は「研究者としての素質」を見る
国立大に限らずAO入試で共通して問うているのは、高校時代の探究活動だという。「問いに対してどのように向き合うか、その姿勢や思考のプロセスを見たいというのが共通する考えではないか」と中川さんは話す。
その代表例が筑波大の「AC(アドミッション・センター)入試」だ。自己推薦書などの書類の選考と面接・口述試験によって評価される。自己推薦書には、「自分の問題解決能力を示す文章」を書くことが求められている。
「字数の決まりはありませんが、8000字から1万字程度で、大学2、3年生が書くような内容のレポートが求められています。何か新しい発見でなくても、途中経過の報告でもいいのですが、いかにアカデミックなアプローチで探求しているかという、将来の研究者としての素質を見たいという大学の目的があります」(同)