AERA 2022年3月28日号より
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 上昇が続いていた金価格が、ウクライナ侵攻で勢いを増している。金価格の押し上げた要因は何か、今後の動向はどうなるのか。AERA 2022年3月28日号は専門家に聞いた。

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 混迷期を迎えている株式市場とは対照的に、足元で勢いづいているのが金価格だ。

 19年の夏ごろから上昇が顕著になり、コロナ禍でそのピッチが加速。さらに、ロシアのウクライナ侵攻が報じられた直後にも急伸した。いわゆる「有事の金買い」が活発化したのだ。

 金の価値は世界共通で信用リスクのない実物資産。不安心理が高まると買われやすい。しかも、貴金属市場に詳しいマーケット・ストラテジィ・インスティチュート(MSI)代表取締役の亀井幸一郎氏は指摘する。

「眼前の有事は、従来とは異質のものだと言えます。コロナ禍の量的金融緩和でドルを刷りまくった結果がインフレを招いていながら、ウクライナ情勢を踏まえるとFRB(連邦準備制度理事会)は急ピッチの利上げを進めにくい。つまり、インフレを抑制しづらく、下手をすれば不景気下で物価上昇が進むスタグフレーションに陥りかねません。こうした状況は金価格の押し上げ要因となります」

AERA 2022年3月28日号より
AERA 2022年3月28日号より

 昔から金価格は、インフレ局面では上昇が顕在化しがちだった。物価上昇とは、通貨価値の下落を意味する。インフレによる目減りを防ぐために、自国通貨を売って金を買う動きが活発化しやすかったのだ。従って、今後もインフレ傾向が続けば、金価格も強含む可能性が考えられるが、亀井氏は忠告する。

「値が噴いた局面では、一気に反落に転じるケースが多いことには要注意。その意味では、貴金属会社の純金積立や、金の現物の裏づけがある金価格連動ETF(指数連動型上場投資信託)への積立投資が無難でしょう」

 ETFへの自動積立は、マネックスや楽天、SBIといった一部のネット証券でのみ可能。他社の場合は、自分自身で毎月注文を入れる必要がある。(金融ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2022年3月28日号より抜粋