
50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、2019年の小脳梗塞に続き、今度はうっ血性心不全の大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。人生の節目の70歳を超えたいま、天龍さんが伝えたいことは? 今回は「谷津嘉章」をテーマに、つれづれに明るく飄々と語ってもらいました。
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4月9日に谷津嘉章と「天龍源一郎VS谷津嘉章 トークバトル」をすることになった。そのことを、前回のトークバトルイベントで発表したら、ファンがどよめいてね。みんなは、俺の性格やバックボーン、SWS時代に揉めた谷津との関係を知ってるから「うわ!」と思ったんだろうね。代表(娘の紋奈さん)はファンから「どうやってオファーしたんですか!?」「大丈夫なんですか!?」なんて質問攻めにあっていたけど(笑)。
谷津とはSWSが解散してから関係が切れて、それっきり。彼のことをニュースで見たり、ほかの人から近況が漏れ聞こえるくらいだったし、それも「ああ、そう」と聞き流していて、家にいる蠅(はえ)くらい気にしていなかったんだよ。谷津も一緒で、彼の人生を振り返ったときに、SWSでのことは「どうってことねえよ」って思っているかもしれないしね。とにかく、お互いはそれからまったく接点が無かったんだ。
そもそもの発端となったSWSでのモメごとは、団体内で俺たちのグループと、谷津たちのグループそれぞれでよかれと思ってやっていたことが、お互いにぶつかり合ってしまったことだ。
それが最終的には大事になって、タガが外れて解散まで行ってしまった。SWSに来た選手は社長やそのツテのある人から声をかけられているから、若手もみんな「俺は社長に声をかけられてきたんだから、団体内でも発言権がある」と思ってしまったんだよね。
選手のトップの俺が社長に用があって、小田原にあったSWSの事務所に行くと、駅で新日本プロレスから移籍した若手とバッタリ会って「おう、どこに行くんだ?」って聞いたら「ちょっと知り合いのところに……」って言うんだけど、そいつともSWSの事務所でまた会ったりね(苦笑)。若手までもが、俺がやろうとしていることへの批判を社長に直接言うような状態だったし、昨日決まったことが、今日になってひっくり返るなんてしょっちゅうだったよ……。