ここまで五つ考えてみて、仕事以外は「食」と「性」にまつわる内容ですね。やはり「食」と「性」の営みこそが生命の中心にあるのです。生命のパワーを高めるには、この二つに働きかけることが、大事です。
次の二つは、私が本業の仕事と同様に、こころを躍らせるものです。
【6】「文章を書く」。いくつかの雑誌で連載を担当させてもらっているので、すぐに締め切りがやってきます。書き始めは大変ですが、折り返し点を過ぎる頃になると、真っ白な原稿用紙に向かうのが楽しくなります。
【7】「講演をする」。文章以上に好きなのが、講演ですね。聴いてくれる人たちの生命のエネルギーと私の生命のエネルギーが交流して喜びを生み出します。
【8】「太極拳」【9】「呼吸法」も欠かせません。この二つが生命に働きかけて、こころを躍動させることは間違いありません。
そして10番目は「最後の晩餐だと思って味わう晩酌」です。死への覚悟を持って飲むことで、こころの疲れが喜びに変わっていきます。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2022年4月1日号