でも、みんなのために自分を犠牲にして、感情を押し殺してまでその場を成立させる。そこまでのことをする必要があるのかなと。純粋に損をするんじゃないかと思うんです。
そういう人だから、すごく力のある人が「この人はやさしいな」と思って、何か大きなチャンスをくれることもあるとは思います。でも、それは与えられているもので、自分の人生を切り開いていくこととはまた違うのかなとも思うんです。
申し訳ない言い方かもしれませんけど、楽をしてる気がするんです。いい人でいる方が楽ですから。本当に自分で突き進むというエネルギーは大変ですから。
もともと、僕も学生時代は引く人間でした。正直、いじめもあったので、より一層、引くことが染みついてもいました。自分を押し殺している方が楽だし、安全。この感覚も、間違いなくありました。しかも、すごく強いレベルで。
でも「これをやってて、何が面白いねん」というのもあったんです。それが芸人になって紆余曲折を経る中で顔を出してきたというか。両方見た上で僕は切り開く方を重視しました。
これも難しいところで、僕もいじめられていた時はいっぱいいっぱいでした。俯瞰して見て、あれこれ考える余裕なんてなかったのが事実です。
でも、僕は会社員もやり、芸人になり、今はこういう思いになった。こんなパターンも事実としてある。それを言うことくらいはできるし、やっても悪くはないのかなと思っています。
かなりまじめなことばっかり言っちゃってましたかね(笑)。あんまり本当のことばっかり言ってたら、やっべぇぞ!
……こんなことを取って付けたくらいでバランスは取れないんでしょうけど(笑)、全て本当に自分が思うことだし、それはしっかり言っていこうと思っています。(中西正男)
■ナダル
1984年12月23日生まれ。京都府出身。吉本興業所属。NSC大阪校33期生。近畿大学卒業後、会社員として勤務しNSC大阪校に33期として入学。複数のコンビを経て、2012年に同期の西野創人と「コロコロチキチキペッパーズ」を結成する。15年「キングオブコント」優勝をきっかけに拠点を大阪から東京に移す。18年、一般女性との結婚を発表。翌年長女が誕生する。今年2月に著書「いい人でいる必要なんてない」が発売された。