永遠のライバル、早稲田大学と慶應義塾大学は今、学生獲得に向けて対照的な道を歩んでいるようだ。最新ビッグデータから新たな潮流を探る。
【前編/始まった早稲田の逆襲 慶應は「マンモス校を避ける傾向」で追い風?】より続く
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教育ジャーナリストで追手門学院大客員教授の西田浩史さんによれば、学生が早慶を選ぶ際のキーワードは「学際融合」。文理問わず、さまざまな学問分野を複眼的に学べる学部を指す。西田さんはデータサイエンティストの井上孟さんと、過去1年間のインターネットでの検索ワードやその組み合わせ、約2億件を分析。それによれば、この1年で学際融合関連の単語での検索が最大20%ほど増え、特に早稲田と全国の国公立大を組み合わせた検索が増えている。
「コロナ禍で将来が不透明なことから、選択肢を広げて複数の分野を学びたい学生が増えているのでしょう。早稲田の著しい増加は政治経済、社会科学、文化構想と学際融合の学部が多いから。旧帝大、上位国公立大には文理含めて学際融合があまりなく、そうした大学の合格当落線上にいる層が早稲田に注目している」
特に社会科学部は法学、経済、文学など幅広く学べることから人気が高まっていると話す。
「慶應の総合政策学部や法学部、経済学部から志願者が流れています。5年ほど前までは考えられなかった傾向です」
次に、データ分析から早慶の併願傾向を探ってみよう。早慶の学部ごとに、国公立大やその学部と合わせて検索された割合(検索率)が10~20%以上増加した大学を調べた。全体として早稲田のほうが伸び幅が大きい。
「掲げた表の一覧には入っていませんが、一橋大が23年度に新設するソーシャル・データサイエンス学部、奈良女子大が新設した工学部も、早稲田はセットで検索されています」
関西でも京大、大阪大、神戸大と難関国立大の検索率が伸びている。
「そのほかの地区でも、北海道大は一部、学部を入学後に選ぶ入試制度があることから、併願先として文理どちらにも対応できる学際融合系が多い早稲田を選ぶ傾向があります。中部と関西は名古屋大の情報学部、阪大の人間科学部、神戸大の国際人間科学部など、上位難関大に学際融合系が多く、それに伴い早稲田併願が増えつつある。これらのデータから『何が何でも国公立大』という意識が薄れていることが見て取れます」(西田さん)