北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

 生殖補助医療大国であるアメリカでも、代理出産を合法化しているのはカリフォルニア州、ニューヨーク州などの一部。イギリスなどは代理出産の斡旋業を禁じて代理出産を認めている。また、依頼する側を自国の国籍を持つ者に限定したり、婚姻関係にある異性愛夫婦と規定する国は珍しくない。一方、「代理出産ビジネス大国」として有名なのはウクライナとジョージアである。ウクライナでは、代理出産した女性の名は一切記されず、簡易的な手続きで生まれた子どもを自国に連れて帰れる。そのため、国内で代理出産が合法化されていても、手続きがより簡単なウクライナで代理出産を求める外国人の「お客」も少なくないのだ。

 日本ではいま、代理出産の合法化の議論がはじまろうとしている。

 この国は、女性の身体に厳しい。緊急避妊ピルのOTC化も「時期尚早」として反対され、今年される可能性の高い中絶薬も世界に30年遅れたあげく、価格が国際基準(740円)の100倍近く(10万円)になる可能性が高い。そういうなかで、女性が健康リスクを背負う代理出産の合法化に向けて議論すること自体、私には違和感がある。基本的に、国がみているのは、「子どもを持ちたい人」の立場からで、結果的に「子どもが増えること」しか考えていない。利用されるのは若く、貧しい女性たちの身体だ。代理出産という技術に対する躊躇こそが、人間の身体に対する想像力であり知性だと、私は思う。想像力と知性のない政治に、もう、私たちの身体が巻き込まれるのはいやなのだ。

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