最後に、ちょっとした運命のいたずらでG1馬の母となったある繁殖牝馬を紹介しよう。1984年にオークスを制したトウカイローマンはその後も長く走り続け、7歳(旧馬齢表記)を迎える87年に引退して繁殖入りという話が持ち上がっていた。しかし陣営はまだ活躍できると判断して現役を続行。トウカイローマンが交配する予定だった三冠馬シンボリルドルフとの種付け権利が宙に浮いたため、トウカイローマンの半妹ながら未出走だったトウカイナチュラルが交配相手となった。

 こうした経緯で生まれた牡馬は、91年に無敗で皐月賞とダービーの二冠を達成。その後も骨折から何度も復活を果たして奇跡の名馬と呼ばれることとなった。彼の名はトウカイテイオー。人気ゲーム「ウマ娘」でもおなじみのあの名馬だ。トウカイローマンが現役を続行せず引退していれば、未出走のトウカイナチュラルが三冠馬シンボリルドルフと交配できていただろうか。それもまた競馬の神様のみが結末を知るイフストーリーだ。(文・杉山貴宏)

暮らしとモノ班 for promotion
大人も夢中!2024年アニメで話題になった作品を原作マンガでチェック