藤原:4択問題の正答だけを求めるのではなく、課題を出してそれを議論することは大事です。僕は「ジグソーパズル型の学力とレゴ(組み立て玩具)型の学力」と呼んでいるんだけど、ジグソーパズル型はピースが多かろうと正解主義のゲーム。でも、これからはイマジネーション一つで家から宇宙船まで作り出せるレゴのような修正主義の学力が必要になってきます。

──経済協力開発機構(OECD)の2018年度学習到達度調査(PISA)では、日本の読解力の成績は8位から15位に順位を落としました。その背景にネット社会なども指摘されています。

藤原:PISA型調査は、初年度は学校に描かれた壁の落書きを題材に賛否両方の意見を読んで自分の意見を説明するというすばらしい問題が出題された。その後は正解を当てる調査に変わってしまったが、スマホやICT(情報通信技術)のために読解力が弱くなることはないんです。問題は日本の学校では小学3年生以降、「黙れ」という教育をやっていること。要するに自分の意見を述べさせない。

■多元的な正義を学ぶ

 僕が奈良市立一条高校の校長時代にやったように、生徒にスマホを使って自分の意見を言わせると、思考力・判断力・表現力が鍛えられる。国のGIGAスクール構想では児童生徒に1台ずつ端末を配布しているが、先生たちが相変わらず正解主義の教育をやっている。児童生徒から先生に意見や質問が逆流する構造がICTで作れれば真の読解力はついていくのに。

山口:大学で教えていて最近の大学生を見て思うのは、彼らの画像処理能力はかなり高い。私なんか比べものにならないぐらい高くて、パワポ(パワーポイント、プレゼンテーションソフト)がうまい。ただ、テーマは独創性があまりなくて、文章も勢いだけで練られていない。出典もつけていない学生が多い。私からすると、紙の本を読んで文章を書いて、何度も練り直して文章に根拠があるか考えてほしいと思うけど、いまの学生たちにそのやり方を強いるのはもしかしたら時代遅れかなと思ったりしています。

 先ほどの初年度のPISAの調査の話で面白いなと思ったのは、正義は多元的であるということ。私にとっては読書がそれを学ぶ機会です。上皇后美智子さまも以前、スピーチで「読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました」と語っていたことがあります。

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