すべての勉強の土台となる読解力だが、その力を伸ばすのは簡単なことではない。伸びない原因は何なのか。どうすれば真の力がつくのか。中学校や高校で校長を務め、教育現場に詳しい藤原和博さんと大学教員でコメンテーターの山口真由さんが意見を交わした。AERA 2022年4月4日号の記事から紹介(前後編の後編)。
>>【前編:東大入試でも必須、複眼的に考える「真の読解力」の大切さ 藤原和博×山口真由】より続く
* * *
藤原:社会に必要とされる読解力は複眼思考。インプットする情報処理力だけでなく、情報をいかに編集して自分の意見が言えるかどうかです。
山口:実は私、アウトプットが苦手です。でも、どうしてコメンテーターができているかというと、入れている情報量が人より桁違いに多いからだと思います。情報をインプットするなら、読むのが一番効率的だと思っているんです。私は本の内容が理解できなかったら複数回読みます。小泉悠さんの『軍事大国ロシア』も2回読みました。勉強したことは反復と継続で定着するので、教科書も繰り返し読んで勉強しました。
例えば、ウクライナ情勢に対して言えることは自分が経験していないことだから限られます。だけど、ロシアに関する本は大量にあるので、週に3、4冊読んでいます。全体的な地図があって、自分がこの部分を話しているとわかると、コメントするのが怖くなくなるんです。
藤原:山口さんは(留学した)アメリカのハーバード大学でも訓練され、本で読んだことだけじゃなくてほかの経験も含めて編集する、つなげる力が鍛えられているから、人を納得させる力があるんです。必要なのは正解を当てる力じゃなくて情報編集力なんですね。
山口:本を読むときは一つのテーマで複数の本を読む。歴史上の人物の本をいくつも読んで複眼的視点を得ると、その人の像が立ち上がってくる。その瞬間に、私はものすごく興奮を覚えます。教育課程での読解力ってそういうことをしてもいいんじゃないかな。例えば織田信長について複数の資料をみんなで読んで、こういう人なんだとディスカッションする。エキサイティングな作業だし、読解力低下や本離れってことも減っていくんじゃないかと思います。