信州大学特任教授・山口真由さん(やまぐち・まゆ 左)東京大学法学部卒。財務省、弁護士を経て、ハーバード大学ロースクール修了。テレビコメンテーターも務める(photo 本人提供)
/教育改革実践家「朝礼だけの学校」校長・藤原和博さん(ふじはら・かずひろ)東京大学経済学部卒。リクルートを経て東京都の公立中で初の民間人校長。奈良市立一条高校でも校長を務めた(photo 本人提供)
信州大学特任教授・山口真由さん(やまぐち・まゆ 左)東京大学法学部卒。財務省、弁護士を経て、ハーバード大学ロースクール修了。テレビコメンテーターも務める(photo 本人提供) /教育改革実践家「朝礼だけの学校」校長・藤原和博さん(ふじはら・かずひろ)東京大学経済学部卒。リクルートを経て東京都の公立中で初の民間人校長。奈良市立一条高校でも校長を務めた(photo 本人提供)

■「ナナメの関係」が大切

──人工知能(AI)やロボットの技術がますます発展すると、無くなる仕事があると言われています。AI時代を生きていく若い人たちに必要な力は何でしょう。

山口:藤原さんが先ほどおっしゃった、つなげる力というのは読解力の一つの要素だと思うんですよね。AIは大量の情報を処理できても、出てきたアウトプットを人間が監督しなければならない。なぜかというと、私たちが共有しているコモンセンス(共通感覚、常識)は非常に複雑で、AIが認識するのは難しい。これからの読解力は、単純にものを読んで処理するだけでなく、構成する力、つなげる力とセットにしていかなくちゃならない。そのためには複数の視点があると学ぶことが重要だと思いますね。

藤原:もう一つ僕が指摘したいのは、読解力は広義のコミュニケーション能力にも近いという点。本を目の前にしたときは「読み取る力」となるけど、目の前に人がいたとき、その人が言っていることをどう理解するか、背景や文化を理解することにもつながる。その意味でも複眼思考でないと危ない。こういう力は、友だちや親子、先生生徒ではなく利害関係のない第三者との「ナナメの関係」で鍛えられるものだけど、日本の社会ではコミュニティーがどんどん衰退していて、核家族化して少子化してナナメの関係が失われている。

山口:(PISAで)アメリカは、数学的リテラシーは低いけど読解力は下がっていない。それはおそらく多様な人たちがいて、日本みたいにコモンセンスを共有できず、相手の目の奥に何があるかを読み取らないといけないからだと思います。相手の後ろにある文脈を読み取らなければならないとき、その基礎になるのが読解力であるとするならば、読解力は、世界に旅立っていく人には一番重要な能力の一つじゃないかと思います。

(構成/編集部・深澤友紀)

AERA 2022年4月4日号より抜粋