「俳優デビューして間もない頃、同性愛者の美青年役に抜擢された『あすなろ白書』は最高視聴率31.9%を獲得するほどの社会現象となり、彼も瞬く間にスターダムへとのし上がりました。しかし、当時の所属事務所からはテレビドラマを中心としたアイドル路線を強く求められたそうです。西島さんはそもそも映画界に憧れがあり、映画俳優としてのこだわりが強かったため、結果的には方向性の違いから事務所を移籍。その際、『民放ドラマに5年間出演しない』との厳しい条件をのんだと当時報じられました。ご本人も『20~30代は仕事のない時期が長かった』といろんなインタビューで明かしていますが、俳優として華々しいスタートダッシュを切れたのに、それを捨ててまで映画俳優にこだわりたかったようですね。そう考えると、オスカーを受賞するような作品で主役を演じ、共演者やスタッフとレッドカーペットを歩いたあの瞬間は感無量だったことだと思います」(前出の映画雑誌編集者)

■恩人はビートたけし

 そんな西島が俳優としての転機となったのは、北野武監督作品の「Dolls」(2002年)。すでに「HANA-BI」でヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、“世界のキタノ”として注目を集めていた頃の作品に、西島は主役に抜擢された。スポーツ紙の芸能担当記者はこう語る。

「当時の西島さんはそこまで売れっ子という存在ではなく、ちょうど映画俳優として頭角を現しつつあった頃です。北野作品が世界的に注目を集めていたので、西島さんの抜擢も相当話題となりました。ですが、いざフタを開けてみると映画は観念的すぎるというか、難解極まりない作品だったため、興行的には失敗したんです。ただ、もともと西島さんは超がつくほどたけしフリークで、オールナイトニッポンのオンエアを欠かさず録音して聴いていたほど。憧れの人の作品に関われたことが相当うれしかったようで『恩人』とまで語っています。この作品で西島さんは一皮むけたような感じがします」

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20年ぶりのたけし映画主演