この記事の写真をすべて見る

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「膀胱がん手術」の解説を紹介する。

*  *  *

 男性のほうが女性より約4倍多く発症するといわれる膀胱がんだが、その理由の一つとしては、喫煙がリスク因子であることが考えられている。膀胱は尿を貯めておく器官であり、タバコの有害物質が含まれる尿に長い期間曝露されることで、遺伝子に何らかの悪影響が及び、がんの発症につながると推察されている。

 膀胱がんは膀胱の内側を覆う尿路上皮にできる「尿路上皮がん」が90%以上を占める。また、がんの深さにより、膀胱の壁の筋層まで及んでいない「筋層非浸潤性膀胱がん」と、筋層にまで達している「筋層浸潤性膀胱がん」に大別される。

■尿道を通って切除する方法で膀胱を温存

 近年では、どのがんにおいてもできるだけ患者のからだへの負担が少なく、機能を温存できることをめざし、縮小手術が主流になっている。膀胱がんも、昔は膀胱を全て切除する膀胱全摘手術が主だったが、術後のQOL(生活の質)低下が課題とされていた。そこで、診断と治療を兼ねておこなうTUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)が確立され、筋層非浸潤性膀胱がんでは膀胱温存が可能となった。

 一方で、膀胱を温存することで目に見えないがん細胞が残存する可能性が考えられ、再発リスクを伴う。そのため、膀胱を温存する場合はTUR-BT後に膀胱内注入療法をおこなう。

 また、転移をした場合は薬物療法もおこなう。膀胱がんの薬物療法では、この数年で多くの新薬が登場している。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、従来の抗がん剤とは異なるメカニズムでがんを攻撃する薬が増え、再発・転移後の治療の選択肢が広がり、延命にも寄与している。

次のページ
筋層に達していないと診断されれば、同時に切除