週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
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 膀胱がんの治療選択におけるいちばんのポイントは、「がんが筋層にまで達しているかどうか」だ。膀胱の内側は尿路上皮という粘膜で覆われており、その下に粘膜下層、筋層と続く。

 がんが筋層に達していない「筋層非浸潤性膀胱がん」では、TUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)が標準治療となり、膀胱を温存できる。

 一方、筋層に達している「筋層浸潤性膀胱がん」では、リンパ節転移や遠隔転移する可能性が高いため、膀胱全摘手術が選択される。

 TUR-BTとは、尿道から内視鏡を挿入して電気メスでがんを切除する方法で、検査と治療の両方に使用される。膀胱がんを疑う場合、まずは診断のための検査としてTUR-BTをおこなう。検査で筋層非浸潤性膀胱がんであると診断された場合は、同時にがんを切除し、膀胱を温存することができる。膀胱を温存できることは患者にとって大きなメリットだが、再発のリスクを伴う。杏林大学病院の福原浩医師は、こう話す。

「膀胱を残すということは、がんがあった根の部分は残るということなので、目に見えないがん細胞が残存し再発する可能性はあると考えられます」

■再発予防のため、抗がん剤などを注入

 再発予防のため、TUR-BTの後には膀胱内に抗がん剤やBCGなどの薬を注入する「膀胱内注入療法」をおこなう。この治療には、TUR-BTの直後に抗がん剤を1回注入する方法や、抗がん剤やBCGを複数回注入する方法がある。

 がんを取りきれているか確認するため、2回目のTUR-BT(2nd TUR-BT)をおこなうこともある。大阪労災病院の辻畑正雄医師はこう話す。

「がんが筋層に達していないものの、がん細胞の悪性度が高いと判断された場合などは、2nd TUR-BTでがんの残存がないか確認し、リスクを判断します」

 高リスクと判断された場合は、治療効果の高いBCGを選択するが、BCGでは、より副作用が起きやすい。BCGによる副作用として、頻尿、血尿、排尿痛、発熱などが起こる可能性がある。

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全摘手術はQOLへの影響も大きい