膀胱全摘手術では、膀胱と骨盤内のリンパ節のほか、男性は前立腺と精嚢、女性は子宮と腟壁の一部、尿道を切除する。

「全摘手術は泌尿器科で最も大きな手術で、術後のQOL(生活の質)への影響も大きいため、がんの状態や全身状態なども考慮して選択します。一方、2018年からロボット手術が保険適応となり、出血量が少ないなど患者さんの負担軽減につながっています」(辻畑医師)

 膀胱を全摘する手術と同時に、尿を排出するための「尿路変向術」もおこなう。体外に尿をためる袋(ストーマ)をつける「回腸導管造設術」や、腸の一部で新たな膀胱をつくる「自排尿型新膀胱造設術」などいくつかの方法がある。

「一般的には回腸導管造設術が多いです。ストーマに抵抗がある人もいるようですが、実は、日常生活での管理はしやすい方法といえます。新たに膀胱をつくる場合は、排尿するためのリハビリやメンテナンスが必要になります」(同)

■進行が速いため、タイミングに注意

 各方法の長所・短所を理解し、がんの状態や生活状況なども考慮して選択することが大切だ。

 膀胱がんの治療について、福原医師は「選択に迷うケースは少ないのでは」と話す。

「複数の選択肢があり、どれを選んでも予後に差がないという場合は迷うかもしれません。しかし膀胱がんは治療の手順が確立されていて、それ以外の方法とは治療成績も明らかに異なるため、基本的には医師が勧める治療が最善と考えていいでしょう」

 膀胱がんは進行が速いため、迷いすぎて治療のタイミングを逃さない注意も必要だという。

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「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【取材した医師】
杏林大学病院 泌尿器科 教授 福原浩 医師
大阪労災病院 副院長 泌尿器科 部長 辻畑正雄 医師

(文/出村真理子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より