「家庭の包丁は切れないので、主婦は相当なストレスを抱えていることも知り、教室を開けばニーズがあるという思いはありましたが、その時はどうやって教室を開いたらいいのかわかりませんでした。その時、ニュース番組で特技を教えたい人と学びたい人をつなぐウェブサイト『ストアカ』の存在を知り、まずカメラ教室を生徒として利用してから、包丁研ぎ教室の講師としてスタートしました」(同)
サラリーマン生活の中で、メインでやっていた業務でなくても、後にスキルとして武器になることがある。
長年培ってきた知識や経験、スキルはけっして無駄にならないと言うのは、『退職後の不安を取り除く 定年1年目の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)の著者で、セカンドキャリアコンサルタントの高橋伸典さん。
「教室を開こうと思っても、自分は人に教える知識やスキルなどないと謙遜している人も多いでしょう。仕事に関する知識やコツ、興味に関する“ニッチな知識や技術”にはニーズがあります。特に資格を取得していなくても、それを興味を引くように、わかりやすく提示すると案外人は集まってきます」(高橋さん)
定年後も働くシニアは年々増えている。
総務省の「労働力調査」によると、20年の65歳以上の就業者数は906万人で、過去最多を更新。
「70歳現役社会」の実現に向けて、国も法整備を進めている。
21年4月に「高年齢者雇用安定法」の改正法が施行。企業の努力義務として、定年制廃止のほか、70歳までの定年引き上げや継続雇用制度、業務委託契約を締結する制度の導入などが定められた。
定年後の働き方には、(1)再雇用、(2)再就職、(3)独立(個人事業主)・起業(法人設立)の三つがある。
かつての部下が上司になるなど、再雇用で働くことをためらう人も多いだろうが、コロナで再就職や独立する環境は厳しくなり、再就職したいと思ってもシニアにとって理想的な仕事を見つけるのは難しい。