フィギュアスケートの世界選手権が3月下旬、フランス・モンペリエで開かれた。注目を集めたアイスダンスの村元哉中(かな)選手・高橋大輔選手が躍進した今季を振り返った。AERA 2022年4月11日号の記事を紹介する。

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村元哉中、高橋大輔組/アイスダンスで16位だった。合計164.25点で、内訳はリズムダンス67.77点、フリーダンス96.48点
村元哉中、高橋大輔組/アイスダンスで16位だった。合計164.25点で、内訳はリズムダンス67.77点、フリーダンス96.48点

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 アイスダンスのフリー翌日、村元哉中(29)と高橋大輔(36)はスッキリした表情で報道陣の前に姿を現した。

「世界と戦えるポテンシャルを持っているチームだなっていうのが、率直な気持ち」(村元)

「先シーズンは自分が『アイスダンサーだ』っていう実感はほとんどなかったけど、今季はやっとアイスダンサーになれたのかな」(高橋)

 充実感を口にした。

 今大会、片足で回転を繰り返す「ツイズル」で高橋がバランスを崩し、右足を氷についた。女性を持ち上げて回転する「ローテーショナルリフト」では、2人の体勢が崩れてしまった。

 合計164.25点は、自己ベストより25点以上低い。「試合が終わってこれだけ悔しいと思ったのは初めて」と村元が振り返るのも無理はなかった。2人が掲げた「トップ10」に対し、16位という最終順位は、決して満足のいくものではない。

 ただ、高橋はシングルから転向してまだ2年強。この短期間で世界選手権までたどりついたことをふまえると、あふれる可能性が見えてくる。

 村元が言う。

「お互いのタイミングを感じる動きや、リフトの安定感は全然(以前と)違います。普通だったら、たった2年でこういう成績は残せない。大ちゃんだからこそできたんだなと思います」

 成長は、何げない細部に透けた。練習で他の組とぶつからないようにする手法を身につけ、遠慮しすぎて練習をやめるということが減った。

「大ちゃんが『こっち』って引っ張ってくれた」

 村元は続ける。

「1年目は他チームが来たらすぐに(練習を)やめていたんです。逆に、私が引っ張っていた。けど、この世界選手権は私が頼っていた。特にフリー(前の練習)は(高橋は)全然動じなくて、びっくり。『あっ、大ちゃんダンサーになった』って感動しました」

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