──どういう点でしょう。
「いじわるばあさん」で一番好きな回は、いじわるばあさんこと石さんが舌切り雀の葛籠(つづら)で、大きいほうを選ぶの。その中から、妖怪がたくさん出てくるわけだけど、いじわるばあさんはそれを利用して、お化けを有料で貸し出すレンタルの仕事をはじめるの。
──たくましいというか、年とったからといってお金儲けすることを諦めないんですね。
そう。これまでマイナスというか良くないものとされていたものを利用してお金儲けをするわけ。逆転の発想です。「いじわるばあさん」は年をとってもお金をかせぐこと、社会に参加することを諦めない。
──老後、いかに社会から切り離されないで生きるかは、社会問題です。
人生100年時代と言われるようになったけど、実際に100年生きた人のノウハウ、体験が積み重なって出てくるのはまさに「今から」なんですよ。これまでは80、90超えて本出す人はめったにいなかった。ほとんど死んでいたし、生きていても、自立した生活はむずかしかった。ましてや何かを書き残したり、広めたりする人は非常に少なくて。ところが、この15年くらいの間に飛躍的に寿命が延びて、人生が本当に100年になった。もちろん心身はフレイルになるんだけど、されど完全にボケるわけでもなく、「こういうものが食べたい」「こういう家に住みたい」と発言するようになった。これからですよ、ジジババ向けのレストランや家ができてくるのは。楽しみです。
(聞き手 本誌・工藤早春)
※週刊朝日 2022年4月15日号