■達成感とチームの一体感を感じて

 コロナ禍以前の、ある年のPTAの年度末総会の時のことです。

 私はその数週間前にインフルエンザをこじらせ、感染力がなくなってからも、咳だけがずっと続いていました。総会では、ステージである説明をする係になっており、処方薬をたくさん飲みながら当日を迎えました。

 基本的に、普段は薬嫌いでなかなか受診もしないのですが、チームに迷惑をかける訳にはいかず、頓服薬も合わせて飲み、エアコンの風が顔に当たるとボーッとなって眠気が来るような状態で登校しました。

 気休め程度に持っていたあめもあまり効果はなく、総会が始まってすぐ、体育館の空調の風を吸ったとたんに、ひどくむせてしまいました。

 この時点で私が話すまであと4~5分。

 このままでは声を出すことはできないので、かなり目立つのを承知でステージから立ち上がって退席し、洗面所でうがいをして席に戻りました。

 私の体調不良を知っていた方々が心配そうにこちらを見ていましたが、水で喉が潤ったことと緊張により、話している間は全く咳き込むことなく、無事に役目が終わりました。

 この達成感と、チームの一体感を感じた時に、PTAが自分自身の楽しみのひとつになっていたのだと思いました。数カ月かけて準備をしているうちに、部活やサークルのノリで打ち解けて、とてもいいチームになるのです。

■息子の障害はあえて話す

 ずっとメンバーに恵まれてきたことも大きいと思います。

 過去のチームで、息子の足のことを知らない方はひとりもいませんでした。

 けれども、あえてサラッとこちらから普通に話していくことにより、親しみを込めて息子をかわいがって下さる方が増えたように思います。

 同時に、何人もの方に「触れて良い話題なのか迷った」と言われました。

「応援してるよ」と伝えることが、失礼なのではないかと思っていたと言われたこともありました。

 本音で話してみると、どのママもとても温かく、優しく見守って下さっていました。

 そして、この環境にいられることがありがたく、また来年も役員を受けようかなと思うのです。

 どこの学校でも、PTAはなかなか立候補がなく敬遠されがちと聞きます。確かに家庭の事情などで、活動に参加することは負担が大きいという人もいると思います。

 でも、私にとっては大変なことばかりではありません。

 PTA役員のすすめ。

 どなたかの参考になれば幸いです。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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