だが、ここにきて何やら動きが急だ。
コロナ禍からの世界的な需要回復で原材料価格が上昇し、食料品を中心に値上げの動きが止まらない。消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、4月から前年同月比で2%を超す上昇を続けている。ロシアのウクライナ侵攻で原油価格も一気に上がり、高止まりが続きそうだ。
一方で「円安」も加速している。年初は1ドル=110円台だったのが一時は24年ぶりとなる139円台まで安くなった。円安になると輸入品の価格が上がるから、こちらもインフレ要因だ。また、円で買えるモノが少なくなるぶん、円安が続くと日本人は相対的に貧乏になってしまう。止まらない円安に「国力」の衰えを指摘する声も多い。
どれもこれも、日本国内で銀行預金にしておくだけでは資産防衛は難しくなってきていることを示している。
先の塚崎さんによると、実際、インフレ要因は短期的なものに加えて中長期に及びそうな構造的なものがあるという。
「一つは少子高齢化による労働力不足です。このままでは非正規労働者やアルバイトは時給を上げないと人が集まらなくなります。少しずつ人件費が上がり、それを転嫁する形で物価も上がるマイルドなインフレになる可能性が高い」
1年、2年なら「マイルド」でも、それが長期に及ぶと影響は大きくなる。仮に1年で1%上がるとすると、30年なら3割だ。預金の金利が今のままなら、買える物の量が30年後には3割減ってしまう。
年金を受給している高齢者にとっては、これはとりわけ痛い事態だ。本誌が6月17日号から7月1日号までで伝えたように、年金にも物価や賃金が上がるほどには年金額を上げない支給抑制策(「マクロ経済スライド」という)がとられているからだ。収入である年金が「目減り」するだけでなく、これではストックである銀行預金も「目減り」してしまう。まさに“ダブルパンチ”の衝撃だ。
それだけではない。さらに、災害大国ニッポン特有の「リスク」もあるという。