瀋陽市のPCR検査会場の一つ(撮影/金順姫)
瀋陽市のPCR検査会場の一つ(撮影/金順姫)

「感染者が増えるにつれて、ゼロコロナに希望を持たなくなった」「ゼロコロナ政策という笑い話はいつ終わるのか」といった当局に批判的な書き込みも目につく。5年に1度の共産党大会を今秋に控え、「社会の安定」を最重視する習近平指導部は、不満の高まりや混乱を防ぎたい考えだ。

 他国と比べると中国の感染者は相対的に少ないが、習国家主席は3月に「堅持こそ勝利だ」と述べ、ゼロコロナ政策の徹底を指示した。一方で不満の声を念頭に、「最小の代価で最大の効果を得られる」よう努め、コロナの経済・社会への影響をできる限り減らす意向も示した。

 上海の日系企業で働く奥山要一郎さん(47)は「2500万人の上海住民の生活が、最小の代価なのでしょう」とため息をつく。たまねぎ、じゃがいも、大根などが配給されたが、ネットスーパーの配送が滞り、食料調達に支障が出ているという。

 習指導部は、「体制の優位性」によってコロナの感染抑制に成功したという宣伝を繰り返してきた。感染の拡大は優位性の否定につながってしまう。自らの主張に縛られ、感染者の存在を前提にした「ウィズコロナ」に転換するのは容易ではない。

 国際政治学者イアン・ブレマー氏が率いるユーラシア・グループは1月、2022年の「世界の10大リスク」の1位に、中国のゼロコロナ政策の失敗を挙げた。ロックダウンなどによりサプライチェーン(供給網)が混乱し、世界経済が不安定化する可能性を指摘する。

 このシナリオが現実化するのか。正念場を迎えた中国のコロナ対応を世界が注視している。(朝日新聞瀋陽支局長・金順姫)

AERA 2022年4月18日号

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