自身初の小説『雌伏三十年』を出版したマキタスポーツさん。その筆力に作家・林真理子さんも驚き。二人の対談は、故郷・山梨の話題でも盛り上がりました。
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林:この対談のゲストに、高校の同窓生に出ていただいたのは2人目で、1人目がテレビ朝日の早河(洋)会長で、今回のマキタさんが2人目なんです。
マキタ:ああ、光栄です。
林:私たちが出たあの高校(山梨県立日川高校)は、旧制二中の流れをくんだ山梨有数の名門校でしたけど、以前あった総合選抜という入試制度なんかが影響して、今は見る影もないみたいで。
マキタ:だいぶ様変わりしたみたいですね。
林:でも、あそこを卒業したということにプライドと愛着がある人は多いですよね。
マキタ:すごいバンカラな学校でしたよね。毎年上級生が新入生たちにオリエンテーションをしていて、林先輩の時代もあったと思うんですけど。
林:ありました。幕を引いた暗い体育館の中で、竹刀を持った上級生たちが「おまんとう! こんなことでいいと思ってんのか!」って。恐怖のあまりお漏らししちゃう子もいたみたい。
マキタ:すごかったです、あのイニシエーション。今でもすごく記憶に残ってますよ、倒れちゃう人続出で。
林:母校の話は尽きませんけど、マキタさん、小説(『雌伏三十年』)をお書きになったんですね。このごろ芸人さんが小説をお書きになるケースが多くて、そういう作品ってだいたい主人公がハチャメチャなことをやるからおもしろいんだけど、マキタさんのこの自伝的小説は、親が離婚して高校中退して、みたいな感じじゃなくて、ふつうに大学に入ってるんですよね。内面のモヤモヤ感というか、何者かになりたいという感じが痛いほどわかる普遍的な小説で、「うん、わかる」という人、いっぱいいると思いますよ。
マキタ:そうですか。僕は小説自体、初チャレンジでしたけど、「文學界」で連載してたんですよ。
林:純文学の牙城「文學界」で連載できたというのは、すごいことですよね。しかも、長く続いたんですよね。