こうして平均寿命は飛躍的に延びた。これをすばらしいニュースだ。幼くして死んでいた子どもたちが、大人になって充実した人生を送っている。しかし、人びとが考え出したすばらしい解決策が、新たなレベルの脅威を生み出した。それは人間自身である。

 人類がいま直面している問題の多くは、死亡率減少の二次的影響といえる。気候変動は一般に産業革命の影響だと理解されているが、もし私たちが化石燃料に頼るライフスタイルを採用しながらも、死亡率が下がっていなかったら、気候変動は問題になっていなかっただろう。しかし現実には、世界中の平均寿命が延び、増えた人口が環境に影響をおよぼしている。そして温室効果ガスを削減する意志の力も制度も、人類にはまだないようだ。

 人間の寿命をこんなに延ばすことは、ひとりの天才の発明や発見だけではかなわなかった。そのひらめきを具体的な商品にしたり、広く普及させたり、別のアイデアや知識と結びつけたりすることが必要だった。あるいは普通の人が身のまわりの疑問を突き詰めて考えたり、平凡なことを積み重ねたり、新しいことにチャレンジして試行錯誤を繰り返したりすることが必要だった。さらには多くの視点から状況を見きわめることが必要だった。

『Extra Life』にはその事例がたくさん詰まっていて、人間のすばらしさも愚かさもあらためて知ることができる。そこから学べることが、私たち人間自身というこれからの脅威と対決するのに役立つはずだ。

暮らしとモノ班 for promotion
「集中できる環境」整っていますか?子どもの勉強、テレワークにも役立つ環境づくりのコツ