日本のロシア大使館前での反戦デモ
日本のロシア大使館前での反戦デモ

 ジェノサイドを認定するのもハードルが高いという。国民的、民族的、人種的、宗教的な集団そのものを破壊する意図があったことを立証しなければならないからだ。

「1990年代の旧ユーゴスラビア紛争で起きた戦争犯罪を巡って、国際刑事法廷でジェノサイドの罪が認定され、元セルビア人勢力指導者のカラジッチ被告らが終身刑判決を受けています。対象となったのはスレブレニツァの虐殺事件で、7千人以上のムスリムが犠牲になったケースです」(同)

 プーチン氏を裁判にかけることは困難としても、123カ国・地域が加盟するICCの認定は重い意味を持つ。被疑者に対する国際社会の信頼は失墜すると、浅田教授は説く。

 一方、ウクライナ側の激しい抵抗にロシア軍も多数の死者を出している。欧米からの軍事支援の強化も理由の一つだが、特に強力なのが米国の対戦車ミサイル「ジャベリン」だ。歩兵が肩で担いで携行できる兵器で、多数の戦車を撃破し、前進を阻んできた。混乱の中、狙撃兵の攻撃などでロシア側の将官級指揮官7人が死亡したとされる。前出・半田氏が説明する。

「クリミア半島が併合された2014年以降、ウクライナは徴兵制を復活させて兵員を増強しました。さらに米国の軍事顧問団が入り、最新の戦術や最新鋭の兵器の使い方を伝授していた。英国の特殊空挺部隊(SAS)も協力するなど、米英でウクライナを橋頭堡(きょうとうほ)のようにして鍛えていたことが、今回、成果を発揮しているのです」

 供与される兵器も榴弾砲や装甲車など大型化し、エスカレートしている。

 代理戦争の様相を呈しているが、戦闘が激化すればするほど民間人の犠牲が増えるのは明らかだ。4月14日、ロシア黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ」が沈没。ウクライナ側は対艦ミサイルで攻撃したと胸を張るが、ロシア側の再報復も懸念される。一日も早い停戦合意が望まれる。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2022年4月29日号