この措置を契機として、半導体などの分野で日韓協力を進めることに合意すればさらに良い。半導体では日本は韓国に完敗したが、下請けとして製造装置、部品、材料などの供給で大きな利益を得ていた。対韓輸出規制でこの補完関係にヒビが入ったが、これを再構築するのだ。世界最先端を行くサムスン電子やSKハイニックスなどと日本企業のウィンウィンの関係が強化できれば大きな成果である。これにより、台湾のT S M C社だけに頼っていた脆弱な半導体復活プランはサムスンなど韓国勢を加えることにより、厚みのある計画にバージョンアップできる。
日本が先にアクションを起こせば韓国も動きやすい。韓国が一旦破棄を通告したがその後その効力を停止中という宙ぶらりんの状況にあるGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の正式延長に踏み込むことも、韓国側にとっては非常に容易になる。これでお互いが譲り合うという、これまでなかった前向きの関係も演出できる。もちろん、実利も大きい。
こうしたやり取りを迅速に行えば、徴用工判決による日本企業の資産現金化を阻止するための具体案でも、韓国側が国内世論を説得しやすくなるはずだ。
日本企業の資産現金化まで時間がない。日本政府は直ちに行動に移るべきだ。
※週刊朝日 2022年8月12日号から