――世の中の人に伝えたいことは?
たくさんのご支援をいただいていると聞いています。本当にありがとうございます。
今年の初詣の出来事なのですが、子どもが「待ち人来たる」と書かれたおみくじを引き、「パパが帰ってくる!」と大はしゃぎしたそうです。涙を抑えられませんでした。帰りたい。とても。今度こそ公正な裁判をしてもらえると信じます。
万が一それが果たされなかった場合、どうか子どもたちのことをあたたかく見守ってください。お願いします。
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朴被告の話を聞き、疑問を感じた点がある。
まず、佳菜子さんの自殺の背景に産後うつがあったという主張は現実的なのだろうか。つきじ心のクリニックの榊原聡院長は産後うつの初診患者を月に5~10人診ており、「悪化すれば、錯乱も自殺も十分あり得る」と話した。
朴被告は佳菜子さんが病院に行くことを拒んだと話したが、これも考えられるケースなのか。
「『通院や入院の間だれが子どもをみるの?』と抵抗を感じる母親は少なくない。家庭内で抱え込まず、児童相談所による一時預かりなどを活用すれば助けになったかもしれない」(榊原院長)
次に、検察の立証手法について。朴被告の証言どおり、今回の裁判では司法解剖を行った医師とは別の法医学者が証人として登場した。同様の事例はよくあるのだろうか。
佳菜子さんの司法解剖を担当した千葉大学大学院医学研究院法医学教室の岩瀬博太郎教授は、「本事件についてではなく、あくまで一般論」と前置きしたうえでこう語った。
「検察が直接解剖や診察をしていない専門家を証人にするのは日常茶飯事で、その結果、都合のいい証言を集めることができてしまう。自分が関わった事件でも『これは冤罪では?』『無理筋では?』と思ったことは何度かあります」
朴被告の子どもや友人は、公正な裁判を求めて署名活動を行ってきた。佳菜子さんの父親も昨年5月、最高裁に上申書を提出し、「朴君は、決して佳菜子を殺すような人ではありません。事実と異なる判決が確定してしまったら佳菜子も浮かばれません」と訴えた。
はたして最高裁は、どんな答えを出すのか。
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【弁護側や有識者が指摘する、これまでの裁判の主な問題点】
一審判決の根拠の一つが、佳菜子さんの額にあった傷が原因とみられる、階段付近の15カ所の血痕だ。寝室にはないため、寝室でのもみあいの後に負傷したことがわかる。
弁護側は「自殺する前、階段で転ぶなどして負傷した」と主張。一方、検察は「寝室で首を絞められて脳死状態になった後、事故死を偽装しようとした朴被告に階段から突き落とされてけがをした」とした。一審判決は「傷を負ったとき、歩き回るなど活動できる状態であれば、より多くの血痕が残るはず」と、自殺の可能性を退けた。
しかし二審では、倍近くの28カ所の血痕があったことを示す新証拠が提出された。「血痕の数が少ない」という一審の根拠は崩れたが、二審判決 は「額に傷を負ったら血を拭うのが自然だが、被害者の手には血がついていない。意識がなかった証拠だ」という新たな理由で、再び有罪を言い渡した。
元裁判官で法政大学法科大学院教授の水野智幸氏は判決文を読み、「私が本件の裁判官なら有罪判決は出さない。再審理を求めて一審に差し戻すべきだ。『額の血を拭うはず』という論拠は有罪理由の核にするにはあまりに弱い」と指摘した。
朴被告の代理人・山本衛弁護士は、弁護側の重要証拠が無視されたことも問題視する。
「洗面所の電気のスイッチに佳菜子さんのDNAだけが検出された血痕があった。これは、佳菜子さんがもみ合いの後も活動していたことを意味する。手を洗ったのなら、手に血がついていない説明にもなるが、判決では触れられなかった」
(本誌・大谷百合絵)
※週刊朝日 2022年4月29日号に加筆