(週刊朝日2022年4月29日号より)
(週刊朝日2022年4月29日号より)

 今春の春闘は、日本労働組合総連合会(連合)のまとめで、平均賃金の加重平均で2.11%の上昇(4月1日集計時点)。

 春闘の賃上げに比べ、ここで取り上げた企業は明らかに違う動きとなっている。転職市場を見ているリクルート特任研究員の高田悠矢さんは「労働市場が景気循環よりも加速している」と指摘する。一部の企業が人手不足に気づき、大幅に賃上げを始めたと説明する。

 高田さんによると、安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」が始まった13年ごろから、人手不足が出てきた。特に、ITエンジニアや事務系専門職の分野で人手不足が顕著にみられると指摘する。

 IT業界では当初、26~35歳の「ボリュームゾーン」で人材の流動化が活発化した。その後は年齢の上限が外れ、仕事のデジタル化とともにIT人材があらゆる業界で必要になってきているという。事務系専門職では、男性から女性へと広がる形で人材の流動化が活発になっていると高田さんは分析している。

 一方、春闘について、高田さんは、大幅な賃上げが難しく、一律に上げられないと話す。このため、人手不足には「春闘で対応ができない」(高田さん)。最近はITエンジニアや事務系専門職のみならず、営業職などの分野でも「人材不足が加速している」(同)。

 人手不足で大幅な賃上げが広がる可能性があると、高田さんはみている。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年4月29日号