物価は上昇しても、給料は据え置きか、せいぜい2%前後の賃上げが一般的だ。そんな時代に大幅な賃上げをするのは、どんな会社なのか。
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今春の初任給を従来の21万円程度から30万円に引き上げたのは旭酒造(山口県岩国市)。日本酒「獺祭」が看板商品だ。対象となるのは製造部の新入社員。同部門の一般社員も2026年度に向けて段階的に「5年で平均基本給を2倍」にする計画を進めている。
旭酒造では昨年9月、海外輸出額が国内販売額を上回った。広報担当者によると、海外輸出額は年間で70億円規模となり、中国や米国、欧州などで人気があるという。
「獺祭をつくって30年になる。当初は10人ほどだったが、20年ほど前から対応を積極化し、新入社員を増やしてきた」(広報担当者)
旭酒造の製造部門は現在、国内酒蔵で最多規模の130人が働く。今後3年に新卒や中途で100人以上を採用する。
賃金を大幅に引き上げる理由について、広報担当者は「一般的な酒蔵や地方の製造業と同じ賃金水準ではいけない。世界水準には、これぐらいは必要」と解説する。
旭酒造では新入社員の応募が増えているという。
一方、玩具メーカーのバンダイ(東京都台東区)は今春に新しい報酬制度を導入した。新卒初任給は29万円と、従来から6万6千円(30%)も上げた。全社員の給与水準も平均で27%程度引き上げた。
広報担当者は「年収ベースの引き上げではなく、月額給与と賞与の比率の変更」と強調する。給与水準の引き上げで、社員のやる気を引き出して活性化を図るという。業績に連動した報酬制度を採用することにより、賞与は業績次第で変動する。
一般的な日本の企業や役所は、月給の何カ月分かを、賞与として夏や冬に支給することが少なくない。バンダイのように、こうした賞与のあり方を見直す動きが出ている。
バンダイは家庭用ゲームなどが好調で、業績が伸びている。21年度の全社平均年収は前年度に比べて10%もアップ。バンダイの親会社、バンダイナムコホールディングスの有価証券報告書によると、20年度の従業員の平均年収は1121万円(平均年齢45 .7歳)となっている。