帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
この記事の写真をすべて見る

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「養生とは何か」。

*  *  *

【いのち】ポイント
(1)「生命(いのち)」こそが養生にとってのキーワード
(2)養生には健康法とは違ったニュアンスがある
(3)養生はホリスティック医学にとって欠かせないもの

 ナイス・エイジングにとって養生は欠かせないものです。ところが、その養生そのものについては、あまり説明しないままでした。改めて「養生とは」と問われると、一口ではなかなか、語れないものがあります。

『養生の思想』(西平直著、春秋社)という本があります。西平さんは京都大学の教授で専門は教育人間学や哲学です。この本では幅広い視点から養生をとらえています。

 まずは養生の三つの側面を述べています。【1】養生は、医療に近いが、治療ではない。養生は自分で行う【2】養生は「気のコスモロジー(宇宙観・自然哲学)」を背景に持つ【3】養生は「欲」と向き合う。養生は、基本的には、欲を抑えることを勧める。

【1】については、確かにその通りです。養生の基本にあるのは、自らが持っている自然治癒力なのです。これを自分の力で高めていこうとするのが養生だと言えます。

【2】については、貝原益軒が『養生訓』のなかではっきり言い切っています。「百病は皆気より生ず。病とは気をやむ也。故に養生の道は気を調(ととのう)るにあり」(第二巻47)。中国医学のベースになっている「気」の考え方によって養生も成立している面があります。

【3】については、貝原益軒は欲の抑制を説いていますが、攻めの養生を提唱する私は、抑制よりもアンリ・ベルクソンのいう生命の躍動(エラン・ヴィタール)を重んじます。養生には、ときめきが大事なのです。

著者プロフィールを見る
帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

帯津良一の記事一覧はこちら
次のページ