日本最北の離島、礼文島にある診療所を見学する「Dr.コトーキャンプ」や、砂川市立病院や市立三笠総合病院で医療を体験する「赤ひげツアー」などでは、手術室や実際の手術の様子を見せてもらうこともある。

「手術支援ロボットのダビンチなど医療機器を扱わせてもらうほか、産婦人科見学の際に帝王切開手術を見せてもらったことで、産婦人科を目指したいという生徒もいました。生の現場に触れることで、受験の面接でアピールになるという強みがあります」(郷頭さん)

 同校のもう一つの魅力は寮の存在だ。東大や国公立大医学部を目指す「青雲寮コース」があり、全国から生徒が集まる。定員は60人。学年の半分近くが寮生だ。

「ただの寄宿舎ではなく、寮生は寮専門の教諭の夜間講習を受けられます。チューターとして北大医学部や札幌医科大の学生30人程度が登録しており、寮生の勉強や進路の相談に乗るなど、サポートは手厚くしています」(同)

 充実した寮生活の人気は高く、合格しても寮に入れない道外の受験生が増えているという。入学をあきらめる生徒がいる一方、母親が子どもと一緒に北海道に移り住み入学するケースが「今年は12組」(同)といい、人気の高さがうかがわれる。

 医学部志望の学生にとって寮はトレンドのようだ。長崎の中高一貫校で、今年は現役合格者36人(7位)を出した青雲にも、寮の強みがある。中学生が入る「望山寮」と高校生寮の「和敬寮」だ。

青雲中の自習風景(同校提供)

◆寮での共同生活 医師の資質育む

 進学指導部長の安田幸典さんはこう話す。

「全校生徒の半分弱が寮生です。望山寮は4人部屋で、和敬寮は個室。中学のうちに自分で勉強する習慣づけをし、高校生になって静かな環境で集中して勉強するという流れで自立を促します」

 自ら学ぶ習慣を促すため、寮生の希望者には、長崎大医学部で学ぶ卒業生たちに学習支援をしてもらっているという。

「寮での共同生活では、相手の立場に立って物事を考えるという、医師として大切な資質が自然に身に付きます。共に過ごす時間が長いからこそ、切磋琢磨して互いを高め合おうとする精神が養われます」(安田さん)

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