免疫ができているのだろうという説もあるが、どうやら飛び始めてまもない花粉には汚れがないから、症状などをひきおこさない。その花粉が街々を流れ流れて都会に到達する頃には、症状は徐々に重くなっている。
その花粉を吸い込んで、花粉のせいだといい、花粉の少ない杉や檜を開発しようというのは、どこか違うのではないか。
私たちは全ての原因を正さないで一つの現象が起きるとすぐ対症療法を考える。花粉症という病には、薬は何を飲んで、何をつければ良いか。花粉症に限らず、私たちは原因究明を怠ってともかくその場しのぎに頼りがちだ。
だからいつまでたっても新型コロナのようなウイルスがはびこり、自国の利益のため気に入らない国に戦争をしかける。この連鎖はいつまでたっても終わることがない。
ちなみに私の検査結果で一番反応したのが、ブタクサとハウスダスト。春も秋もそして一年中、汚い大気の中にいるということになる。悲しいかな、一生続くのだ。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年5月6・13日合併号