補聴器を装用しても効果が得られない難聴の人は、人工内耳などの手術を受けることで聞こえを改善できる。近年は、機器や手術が進化し、治療を受けられる条件が拡大しているほか、手術の選択肢が広がっている。
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75歳以上の約半数が悩んでいるといわれる加齢性難聴。加齢に伴って耳の機能が低下し、聞こえが悪くなる。根本的な治療法があるわけではないので「年だから仕方ない」と放置しがちだ。しかし近年、難聴は認知症の発症や社会的孤立との関連が指摘され、補聴器などで聞こえを改善することが推奨されている。
難聴は程度によって軽度(25~39dB)、中等度(40~69dB)、高度(70~89dB)、重度(90dB以上)に分けられる。中等度以上になると、会話に支障が出やすく、一般的に補聴器の装用をすすめられる。しかし難聴の程度が重くなると、補聴器では効果を得にくいことがある。そうした場合に選択肢となるのが、人工内耳などの聴覚補償機器で、音を聞く方法だ。
そもそも難聴は耳のどの部分が不調を起こしているのだろうか。耳は外側から「外耳」「中耳」「内耳」に分けられる。外から入った音の振動は、外耳の奥にある鼓膜を震わせ、その振動が中耳を通り、内耳に伝わる。内耳にある「蝸牛」には「有毛細胞」があり、内耳に届いた音の振動を電気信号に変える。電気信号は聴神経を通って脳に送られ、音を認識する。
■高度・重度難聴の人が対象に
難聴は聞こえの仕組みのどこかに、障害が起きている状態だ。外耳や中耳の障害による「伝音難聴」と内耳や聴神経の障害による「感音難聴」に分けられる。加齢性難聴は、有毛細胞や神経細胞が年齢とともに変性するなどして起こるため、感音難聴に分類される。
感音難聴に有効なのが人工内耳だ。聴神経に直接電気刺激を与えて音を聞く機器で、日本では年間約1200件手術がおこなわれている。筑波大学病院耳鼻咽喉科教授の田渕経司医師はこう話す。